最近、日本のメディアは、中国が石油掘削作業を始めた南シナ海の西沙(ベトナム名ホアンサ、英語名パラセル)諸島海域で、中国の公務船がベトナムの関連船舶に激突したというニュースに関心を集中し、中国とベトナムとの間に起きたもう一つの重大ニュースは掻き消されてしまったようだ。

きっかけはベトナムのアジア大会辞退

 しかし、中国国内での話題はむしろもう一つのニュースの方に集中している。それはベトナム政府が先月中旬、2019年の第18回アジア大会の首都ハノイでの開催を辞退することを発表したことについてである。

 アジア大会は日本や中国なども参加するアジアのスポーツの代表的な祭典で、1951年から3~5年に一度の間隔で開催されている。第17回が今年、韓国・仁川で開かれることになっている。アジア地域の国内オリンピック委員会(NOC)の集合組織であるアジアオリンピック評議会(Olympic Council of Asia、略称OCA)は12年の総会で、19年のハノイ開催を決定した。これはベトナムにとってはアジア大会の初の開催となり、成長するベトナムをアジアないし世界にアピールする絶好の機会でもあるはずだった。

 しかし、日本のメディアの報道によれば、グエン・タン・ズン首相は「大会招致の目的や意味に関して意見の一致がない上、開催費用や財源をめぐり意見の相違が大きい」と指摘したうえ、「世界的な経済低迷の影響でベトナムの経済状況は多くの困難に直面しており、国家予算は他の切迫した用途に集中すべきだ」とアジア大会開催の辞退を決意した。

 このニュースは中国で意外な波紋を広げた。ちょうど、5月8日、北京で南京ユースオリンピックの100日カウントダウンに関する記者発表が行われた。

 その席上で体育総局副局長の肖天氏は、ベトナム政府が辞退を発表した19年アジア競技大会の開催について中国は引き継ぐ意向があるか、と記者からの質問を受けた。肖氏は、いまのところアジア競技大会理事会から中国へのアプローチはなく、また中国国内で開催に名乗りをあげている都市もないと回答した。

 すると、ユースオリンピック組織委員会の執行主席であり中国共産党南京市委員会書記の楊衛沢氏が話を受け継ぎ、「南京は開催条件を備えており、アジア競技大会の開催も可能だ。もし必要とあらば、我々はアジア競技大会を引き受けたいと考えている」と述べた。