ゲームやスポーツと同じで、この世にもお金や働き方のルールがある。しかし、多くの人はそのルールを知らない。資本主義の仕組みを解説した『資本論』は、この世を牛耳るルールをすでに150年前に解き明かしていた。この連載では、難解な大著『資本論』のポイントを圧倒的に読みやすく解説していく。

なぜ年収1000万円でもしんどいのか?
勝者だけが知っているこの世のルール

 先日、朝日新聞社が発行している「AERA」という雑誌で、年収1000万円以上の人たちの実態を取材した、「年収1000万円の研究」という特集が組まれていました。

 そこで語られていたのは、「この仕事内容で、この給料は割に合わない」「しんどい」という嘆きの声でした。激務すぎて、身体を壊してしまったという方もいました。

「年収100万円」の時代もあり得るとささやかれる中で、年収1000万円は超高級取りです。年収1000万円に届いている人は、わずか3.8%しかいません。世間一般から考えれば、「目標」とされることが多い金額です。それなのに、1000万円プレーヤーたちは、幸せそうではないのです。なぜでしょうか?

 しかも、自分たちで幸せでない理由を言える人は少ないです。「しんどい」という自覚人はほとんどいません。どうすれば勝ちやすくなるのか、どうすれば“負け”になってしまうのか、“負け”ないためにどんな傾向と対策があるのか、学びません。

 そもそも自分にとって何が“勝ち”で、何が“負け”かも自分で知りません。というより、これらを知ろうとする発想も持っていません。

 ルールを知らなければ、その環境の中で適切に振る舞えません。社会のルールや構造を知らなければ、望む結果が出ないのは当然のことです。

 とはいっても、実社会はゲームやスポーツとは違います。ルールブックが明示されているわけではありませんし、「ルール説明の場」があるわけでもありません。

 会社の上司が知っているとも限りません。場合によっては、定年を迎えるまで結局ルールが何だかわからなかったという人もいるのではないでしょうか?

 資本主義社会のルールは、「経済学」から読み取ることができます。