「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」
部下の指導に悩んだとき、この山本五十六の言葉を噛みしめたことがある人は少なくないはず。特に後半の「ほめてやらねば」。ほめなければ人は動かない、そうわかっていても、部下を「ほめる」ことはなかなか難しい。あなたがほめたつもりでも、部下はそう受け取っていないかもしれないからだ。サーベイリサーチセンター(東京都荒川区)が行った、「職場における『ほめる効果』に関するアンケート」からは、上司と部下の「ほめる」ことに関する意識の違いが垣間見える。
調査対象は日本全国の20~59歳の男女個人(民間企業の正社員および公務員の正規職員)。調査方法はインターネット。調査期間は3月27日~4月3日。回答者数は665人(民間企業の正社員管理職124人、一般社員213人、公務員の正規職員管理職122人、一般職員206人)。
ほめられた人は
同僚・部下を「ほめる人」になる?
調査では、上司にほめられている人のほうが、「挑戦意欲」「仕事への満足」「仕事への楽しみ」「自信」「誇り」が高いという結果となった。これは、「上司にほめられている方だと思うか」に対し、「そう思う」「まあそう思う」と答えた47.5%を「ほめられている人」、「あまりそう思わない」「そう思わない」の52.5%を「ほめられていない人」として比較した結果。仕事に対する意識42項目(※)のうちの多くで、「ほめられている人」の方がポジティブな回答結果となった。
「ほめられていない人」より「ほめられている人」の方が20ポイント以上高かった項目には、「現在の労働時間(長さ)に満足している」「今の仕事に満足している」「周囲の人との人間関係に満足している」など、仕事に対する満足度に関するものも多く、「ほめられる」ことは仕事への納得度、満足度に必要なものであることがうかがえる。
また、ほめられた経験のある人は、結果的に自分も「ほめる人」になる傾向があるようだ。「上司からほめられた経験」について聞いたところ、「この1ヵ月以内に経験した」と答えた人は33.7%。この33.7%に「同僚・後輩をほめた経験」について聞いたところ、1ヵ月以内にほめた人は63.1%。全体に同じ質問をした結果の34.1%と比べて2倍弱という高さだった。
(※)「挑戦意欲」「仕事への満足」「仕事への楽しみ」「自信」「誇り」などを指し、同志社大学政策学部・太田肇教授「承認とモチベーション」(同文舘出版)より調査項目を使用
ほめられた経験のある人、ほめられた経験の多い人は、ほめられるうれしさや、それでモチベーションがアップすることを、身を持って理解しているのだろう。だからこそ、他人に対してもほめるポイントやタイミングがわかり、うまくほめることができるのかもしれない。