この先の見えない時代――
どんな社会でも生き抜いていける「一生ブレない自信」をわが子につけさせるにはどうすればいいのか? そう思い悩む親も多いはず。
0歳から3歳まで、好き嫌いがハッキリしてくる6歳以降、そして「難しい年頃」といわれる中学生から高校生にかけて――。
それぞれの段階で、「一生モノ」の自信をつけさせるために親がしてやれることは何なのか? 今回は、トップ進学校・開成学園校長を務める柳沢幸雄先生に、子どもをやる気にさせる親の習慣をうかがいます。
子どもをやる気にさせる究極の褒め方
――子どもの自信を育てるには、親はどう接すればいいのでしょうか。
柳沢 最も効果的な方法は、「褒めること」です。褒めることで、子どもは必ず伸びていく。連載の第2回目でお伝えしたように、自信を養うには、自主的に取り組んだことで達成感を感じるのが一番いいのです。ですから、子どもが何をやりたがっているのかちゃんと観察し、やりたいことが出てきたら抑えつけずにやらせてみる。そして、少しでもできるようになったらしっかり褒める。そうすれば、成長の好循環に入ってぐんぐん伸びていきます。
――効果的な褒め方を教えてください。
柳沢 ポイントは、具体的に褒めること。何に対して、どのような点を褒めているのか明確に表現することです。たとえば野球なら「ちゃんとストライクが取れるようになったね。すごいね」と。具体的に褒めることで、“努力しているところをちゃんと見ているよ”と子どもに伝えることができる。つまり、褒めるというのは、子どもに意識を向けてしっかり観察していないとできないことなんです。
目に見えるような成果が出ていなくても、どうぞ褒めてください。以前と比較して、少しでもできるようになっていればいい。水平ではなく、「垂直で比較」することです。
――“垂直比較で褒める”とは、どういうことですか?
柳沢 比較する対象は、他人ではなく、“過去の本人”。つまり、“本人の時間軸”という「垂直」の視点で、過去のその子自身と比較をするわけです。本人の成長軸に当てはめて、以前より少しでもできていれば努力している証。思いきり褒めてください。
アメリカ人がなぜあれほど自信満々で堂々としているかといえば、“褒める教育”で育っているから。日本語と比べて英語には褒め言葉も多い。つまり、自信を育てるには、上手に褒めること。これにつきます。褒めることで、反抗期もうまく乗り越えられると思いますよ。
東京大学名誉教授。開成中学校・高等学校校長。シックハウス症候群、化学物質過敏症に関する研究の世界的第一人者として知られる。1947年、疎開先・千葉県市川市の母の実家で出生。1971年、東京大学工学部化学工学科を卒業後、日本ユニバック株式会社にシステムエンジニアとして勤務し、激務のかたわら、週15時間英語の勉強に打ち込む。1974年、水俣病患者を写したユージン・スミスの写真に衝撃を受け、化学工学を勉強すべく、東京大学大学院工学系研究科の修士課程・博士課程に進学。この頃、弟と一緒に学習塾の経営を始める。東京大学工学部化学科の助手を経て、1984年にハーバード大学公衆衛生大学院環境健康学科の研究員の職を得て、家族を連れ渡米。その後、ハーバード大学公衆衛生大学院環境健康学科の助教授、准教授、併任教授として空気汚染の健康影響に関する教育と研究に従事、学生による採点をもとに選出される「ベストティーチャー」に数回選ばれる。1999年、東京大学大学院新領域創成科学研究科環境システム学専攻教授に就任。2011年より現職。