「目的」「主体」「財源」
3つの視点で公共事業を分析してきた
バブル経済崩壊後の1993年頃から全国各地を取材している。テーマは一貫して、税金の使われ方について。それも霞が関や永田町ではなく、実際に税金が使われる現場から実態をウォッチし続けている。取材行脚を始めてから20年が経過した現在、まるで双六で振り出しに戻ったときのような思いが募ってならない。
税金とは、「私たちが生活する上で抱える社会的な課題を解決するために、皆で出し合うカネ」と理解している。そのカネの集め方と使い方を決定するのが、政治だ。そして、政治の決定に従って諸々の実務を担うのが、行政である。
そう教えられてきたが、目の前で展開される事実はそうではない。今さら言うまでもないことだが、公共事業の分野でとりわけ齟齬が目立つ。
様々な公共事業の取材を重ねているうちに、3つの視点で公共事業を分析する習性が身についた。事業の「目的」と「主体」と「財源」についてであり、書物に書かれた建前ではなく実態を直視した上での分析である。それぞれ2つに大別できることが見えてきた。
まずは公共事業の「目的」だ。住民や地域が抱える課題を解決するためというのが、全ての公共事業の本来の目的である。あらゆる住民にとって、暮らしやすい地域になるように(広い意味での)環境を整備するという役割だ。しかし、地域の景気浮揚や景気対策を主たる目的とするケースも多い。地域にカネを落とし、カネを回すことに真の狙いがあるタイプだ。
こうして公共事業の「目的」は、「地域の景気浮揚型」と「地域の課題解決型」に大別される(前者も地域の経済的困窮という課題を解決するためのものと見る向きもあるが、対象が特定住民に限定され、一時的な効果しかない彌縫策にすぎないので、後者にはあてはまらないと考える)。
2つめの「主体」は、事業の決定権者に着目したものだ。事業を実施するか否かの決定権だけでなく、その内容についても含む。これはまた、カネの出所とも密接に関係する。