すでに大量のリコール(回収・無償修理)を実施し、各種改善策を実行しているにもかかわらず、米国のトヨタ批判は日々、エスカレートするばかりだ。2月22日には、連邦大陪審からトヨタに召喚状が届いていたことも明らかとなり、今回のリコール問題が刑事事件として処理される可能性すら出てきた。米国人はいったいトヨタの“何”を問題視し、かくも激しい怒りに身を震わせているのか。どうすれば、米国の怒りは収まるのか。世界で誰よりも多くトヨタを提訴してきた米テキサス州ダラス在住の辣腕弁護士、トッド・トレーシー氏に聞いた。読者諸賢には、理不尽に聞こえる答えもあるだろうが、これがトヨタが米国で直面している“現実”である。(聞き手/ジャーナリスト 大野和基)

トッド・トレーシー
トッド・トレーシー
(Todd Tracy)
自動車の安全問題などを専門とする米テキサス州ダラス在住の弁護士。過去20年間で、国内外の自動車メーカーや部品メーカーを相手に起こした訴訟の数は2200件を超える。対トヨタ訴訟の数は世界一といわれ、自動車業界で最も怖れられている弁護士の一人だ

―トヨタを最初に提訴したのはいつか覚えているか。

 22年前だ。

―それ以来何回トヨタを提訴したか。

 100回ほどだ。多くのケースで和解したため、一般には知られていないが、対トヨタの訴訟数では世界一だ。トヨタもそのことは証明できると思う。

 また、何回も打ち負かされてきたが、私は過去6年間でトヨタに一回勝訴した唯一の弁護士だ。

―トヨタを提訴する頻度は多くなっているか。

 毎年増えているが、それはトヨタの市場シェアが伸び、トヨタが販売している自動車のタイプが増えたからだ。例えば、SUV、ライトトラック、ミニバンの販売数は増えているが、(トヨタ車に限らず)、こういう車は横転しやすく、横転すると、ルーフがつぶれる場合が多い。トヨタを含めた、どの自動車メーカーについても言えるが、我々が扱っているケース(訴訟案件)の50%は、横転のケースだ。

―今トヨタに対して抱えている訴訟の数は?

 16だ。扱っている案件の半分以上は、死亡事故に関連するものだ。(ポリシーとして)死亡事故か重傷事故でないと扱わない。(現時点でも)我々は世界の誰よりも対トヨタ訴訟を抱えていると思う。