中国最大のEコマースを展開するアリババ・グループは8月にも米国で上場を果たす。その時価総額は20兆円規模になるといわれている。なぜ、そこまでの値段が付くのだろうか。

 アリババ・グループの筆頭株主であるソフトバンクの社員は、ある光景が忘れられない。

 2009年、設立10周年を迎えたアリババの社員向けイベントに招かれたときだった。暗闇の中、約3万人を収容する巨大スタジアム全体が無数のペンライトで輝き、大きな歓声が上がった。

 ステージの照明の先には、腰まで伸びた白髪に、サングラス、赤色の炎の模様が入った黒いジャケットをまとい、口紅をつけた男性がマイクを握って登場した。ライオン・キングの歌を独唱するその人物こそ、アリババ創業者の馬雲(ジャック・マー)会長だった。

 もともと英語教師であり、IT業界の他のトップとは違い、技術には疎いと公言する馬雲会長。だからこそ、「世の中から難しい仕事をなくそう」と会社の使命を掲げ、ユーモアあふれる話しぶりと型破りの発想で、多くの有能な若者を引き付けた。10周年イベントで見せた奇抜な姿は、人気ロック歌手のライブさながらで、カリスマ性を見せつけた。

 今年5月、そのアリババは米国証券取引委員会に新規株式公開(IPO)を申請した。審査が通れば、1999年の創業からわずか15年で、トヨタ自動車並みの時価総額約20兆円(証券会社による評価)の企業が誕生する。12年に上場した米フェイスブックの初値を超え、史上最大級のIPOになりそうだ。

 なぜ、これほどまでの企業価値が認められているのだろうか。