緘黙であることを伝えた際のデメリットはあまりないという。ただ、安易に緘黙という名前だけを伝えてしまうのはよくない。その状態がどういうものであるかを伝えて、一緒に考えていくことが必要になる。

 一方、中学生以上になると、治りづらくなるのは、前述したとおり、友人関係の中で孤立に陥りやすい環境因子が影響している。

 とくに、本人が「自分の緘黙状態は、もう変わらない。ずっとやってきたし、このままいくしかない」と思い込んでしまっているとしたら、やっかいだという。

 では、緘黙の支援は、どのような状態を目指せばいいのだろうか。

「治るというのは、話せるようになることではありません。いかに、その子がいま持っている力を100%発揮させるか。そして、その子がいま持っている力で、いかに活動や参加を促進させていくかがゴールになっていきます」(高木講師)

 そのためには、緘黙の本質にある環境要因にアプローチしていくことだ。そして、本人も意思である話したいという気持ちを上手に育てていくことが大事になる。

 家庭だけ、学校だけの状態を考えていると、正確な状態は捉えられない。その子が生活している、いろいろな場面での情報をしっかり集めていくことと、家庭と学校、幼稚園、保育園等との連携が必要だ。

 支援方法としては、PDCA(P=計画を立てる、D=実行する。C=上手くいけるかどうかを確認する、A=改善する)という流れを継続していく。

 実際には、まず、当事者が安心して過ごせる環境を作っていくことが大事だ。

 例えば、緘黙状態の子が不安を感じやすい環境は、他の子たちも不安を感じやすい環境であり、誰にとっても過ごしやすい学級などの現場にしていく。

 次に有効な方法が、細かい階段をつくって、一歩一歩進めていくスモールステップによる介入だ。

 子どもが生活している空間は、家庭と学校だけではない。この間には、家の外、校庭、保健室などがある。どこまでの空間なら、子どもたちは話すことができるのかを考える。

 人や時間のステップもある。例えば、担任教諭が自宅に来てくれれば、話ができるかもしれない。また、夏休み中や放課後の誰もいない時間、母親と一緒なら話すことができるかもしれない。