だが、高知の小さな無名の山村にすぎなかった旧十和村は違った。国策に従わず、地元の広葉樹林を大切に守り続けたのである。当時の森林組合長の岡峯藤太さんが、「何でもかんでも植林さえすればよいというものではない。山の複合経営を維持すべきだ」と、住民を説得して回ったことによる。

 岡峯組合長の考え方はこうだった。スギ・ヒノキを植林しても、それらが商品になるには40年以上かかる。その間、山から収入が得られなくなり、いずれ生活できなくなる。年間通して山から収入を得られるような複合経営を維持すべきで、そのためには天然の広葉樹林を残しておくべきだというものだ。シイタケやクリ、茶などを栽培するためである。

 岡峯さんはムラづくりに心血を注ぎ、森林組合事務所に寝泊まりする生活を送っていた。そんな人物の懸命な説得に、住民の誰もが耳を傾けた。そして、補助金の魅力に惑わされずに広葉樹林を残す道を選択したのである。こうして旧十和村の約6割が広葉樹のままとなり、地域の貴重な資源となったのである。

成功事例をマネするだけではダメ
地域活性化に特効薬は存在しない

 地域資源を守り、活用することを提唱した岡峯組合長は、人材育成にも熱心だった。若者たちと森林組合事務所で村づくりの話しに没頭し、そのまま朝を迎えることも珍しくなかった。こうして小さな村に、岡峯門下生というべき人材が育っていった。「四万十ドラマ」の畦地社長も、そうした系譜の中にいた。

 地域活性化に特効薬は存在しない。それはダイエットと同様だ。成功事例をそっくり真似しても、うまくいくものではない。ましてや国の施策に期待し、依存することは失敗の元でしかない。

 楽して痩せようと思って始めるダイエットが、無駄ガネを使うだけで成果なく終わるのと同様である。