ECBがこうした追加緩和策に追い込まれている最大の理由は、2012~13年の景気低迷により、ジリジリと低下し続けてきた物価にある。

 理事会直前の6月2日に発表されたドイツのインフレ率(5月)は前年同月比+0.6%と、市場予想の+1.0%を大幅に割り込んだ。また、3日公表のユーロ圏インフレ率(5月)も+0.5%まで落ち込み、これまたECBが掲げる「2%未満で、かつ2%に近づける」との物価目標から大きく乖離している状況なのだ。

 さらにここ最近、ECBにとって新たな脅威として浮上しつつあったのがユーロ高である。これがインフレ率の低下を招き、インフレ率の低下がさらにユーロ高を招くというスパイラルに陥りかねないからだ。

 現在、米国は景気回復と量的緩和(QE)縮小という対照的な状況下にある。これによりドル高が順調に進みさえすれば、対ドルでユーロは下落していくはず──そんな大方の中長期予想に反し、ユーロ高はしぶとく続いている。

 そのため4月以降、「ユーロが高くなればなるほど、より強力な度合いの金融緩和が必要だ」(クーレ理事、4月11日)、「為替レートの上昇は、一段の金融緩和を必要とさせる」(ドラギ総裁、4月13日)などと、ECBは口先介入によるユーロ安誘導を積極化させてきた。しかしその効果にも限界があり、今回、追加緩和決定に至っているものと思われる。

ユーロ圏で
量的緩和が難しい理由

 もっとも、仮に今回、(1)利下げが決定されていたとしても、その効果は極めて限定的なものにとどまる可能性が高い。既に政策金利は0.25%と、下げ幅の余地は0.15%ポイント程度しかないからだ。

 完全なゼロ金利にはできないので、利下げカードの残り枚数はもうゼロである。今後、より積極的な緩和策を市場から迫られる場合、いよいよECBもFRB(米連邦準備制度理事会)や日本銀行のように、国債を中心とした金融資産を大規模に購入する(6)QEの実施か、というステージに突入する。