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佐藤一郎のパースペクティブ

技術と制度が不可分になる時代

佐藤一郎 [国立情報学研究所・教授]
【第14回】 2014年6月24日
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 しかし、その人には従来の運転免許がいるのだろうか。緊急停止ボタンの操作は運転といえないとしても、自動車を操作にしているのだから、緊急停止ボタンの操作に関わる免許が新設されるのだろうか。こうした責任関係や免許の関係も整理されるべきである。端から見る限り、国内の自動運転では制度面の問題を明確に扱っているとはいえないように思える。

 事故に関わる責任関係を含めて、自動運転に関わる制度設計には、その自動運転技術の研究開発に関わる方々の知見は不可欠であるし、その制度設計によっては、求められる自動運転技術も変わってくるはずである。自動運転は技術と制度が不可分な分野といえる。

制度設計を政治家や役人任せにはできない

 前述のように、技術が生み出す問題を技術だけでは解決できなくなくなっている。特にITは社会で広く利用されるために、ITが引き起こした問題は社会にも関わってくる。

 このため問題を解決するには、技術以外の方法、例えば制度の助けも必要となってくる。このため、技術の研究開発においても、その技術が生み出すであろう問題を事前に予測するとともに、その問題の解決を補完する制度設計も同時に進めるべきである。

 言い換えれば技術と制度は不可分になろうとしており、技術の研究開発と制度設計は一体で行われるべきである。このとき、技術者は、制度設計を政治家や役人、法律学者任せにはできない。少なくとも技術が専門だから制度のことは知らなくていいという理屈は通用しないだろう。むしろ技術者も制度設計に積極的に関わることが求められるだろう。

 しかし、こうしたことは口で言っているだけでは説得力がない。そこで個人情報保護法の改正に関わることで、実践することとなった。もちろん、まだまだ道半ばではあるが、技術者も制度設計に関心を持ってほしいし、その知見を活かすことが、よりよい社会につながると思っている。

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佐藤一郎
[国立情報学研究所・教授]

国立情報学研究所アーキテクチャ科学系教授。1991年慶応義塾大学理工学部電気工学科卒業。1996年同大学大学院理工学研究科計算機科学専攻後期博士課程修了。博士(工学)。1996年お茶の水女子大学理学部情報学科助手、1998年同大助教授、2001年国立情報学研究所助教授、を経て、2006年から現職。また、総合研究大学院大学複合科学研究科情報学専攻教授を兼任。
専門は分散システム、プログラミング言語、ネットワーク。

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分散システムの研究を核としつつ、ユビキタス、ID、クラウド、ビッグデータといった進行形のテーマに対しても、国内外で精力的に発言を行っている気鋭のコンピュータ・サイエンス研究者が、社会、経済、テクノロジーの気になる動向について、日々の思索を綴る。

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