日系メーカーも数多く進出するタイ。東南アジアの一大製造業拠点だ。ここで近年、大きな問題となっているのが、違法ソフトウェアの使用。なんと71%ものユーザーが不正ソフトウェアを使っているとの調査もある。この状況に業を煮やしているのが米国で、法規制などによるタイ企業の摘発が増えている。もちろん、進出している日系メーカーにとっても他人事ではない。

 6月18日。タイ・バンコクで「現代の製造業、公正な取引とITセキュリティ」セミナーが開催された。主催者はロンドンのオープン・コンピューティング・アライアンス(OCA)。タイ警察のチャイナロン・チャルンチャイナウ経済犯罪部副司令官や米国特許商標局のピーター・ファウラー東南アジア知財担当 官などが登壇。それぞれの立場で、タイで蔓延する違法ソフトウェア使用の現状と、強化されつつある取り締まりや法規制について語った。

タイ当局が躍起になって取り組む違法ソフトウェア対策。日系企業にとっても頭の痛い問題だ

 違法ソフトウェアの使用は、マルウェア(犯罪プログラム)の蔓延を促すだけではない。正規ソフトウェアを使用しているライバル企業から見れば、原価に大きな違いが出る事になり、不正競争の温床となるのだ。近年、米国は不正競争防止法の運用を厳格化している。カリフォルニア州、マサチューセッツ州、ワシントン州、ルイジアナ州、オクラホマ州それぞれの司法長官が、違法ソフトウェアを使用している企業に対して、罰則を強化する姿勢を打ち出し、実際にタイや中国、インドなどのメーカーが訴訟を起こされたり、罰金を科されるなどの事件が頻発している。

 タイにとって、米国は輸出相手国3~4位の重要国。資源に乏しく、製造加工で伸びている同国にとって、米国の不正競争防止法の運用厳格化は大きな脅威となっている。