祖父母の介護だけが社会とのつながり
“一家全員引きこもり”の深刻

 別の自治体の話だが、前々回の連載で、80歳代の祖母の年金だけを頼りに生活していた50歳代の両親と、10~20歳代の孫たちが、一家丸ごとひきこもり状態になっているという家族のことを紹介した。

 父親は、数年前のリーマンショックの頃に会社をリストラされて以降、ハローワークには通っていたものの、ずっと仕事に就けない状況のままだ。

 また、母親は、自宅からも出られない状態が続いている。

 孫たちも、昼頃、外には出かけていくようだが、学校を卒業してから仕事に就くことができていないという。

 たまたま祖母を介護するために家に入っていた関係者から相談を受けた事例だったが、一家全員が“引きこもり”状態にあった。

 その祖母も最近亡くなって、唯一の年金収入が途絶えたいま、この家族はこれから、どうなってしまうのだろうか。

 ちなみに、家族の両親も孫たちも、医療機関にかかったり、行政や支援機関などに相談したりしている様子もなかったという。介護が入ることもなくなり、唯一の社会とのつながりもなくなった。

 しかし、こうしたケースは、いまや珍しいことではない。最近、筆者は様々な縁があって、地方の街で当事者会や家族会を呼びかけたり、開催したりしているが、家族の力が弱くなってきて、一家が丸ごと地域から引きこもっている状況に似たような話は、あちこちで聞くようになった。

 高齢者の年金が家族のために使われているケースで、とくに高齢者が認知症の場合、地域包括支援センター(高齢者への総合的な生活支援の窓口となる地域機関で、市町村が設置主体)が、経済的な意味での「高齢者虐待ではないか」と指摘する事態も増えていると、前出の医師は説明する。