子が親の死を隠し、親の年金を不正に受け続ける。そんな「消えた高齢者」の問題が、連日のように報道されている。
9月1日、大阪府和泉市の民家の洋服ダンスから、生存していれば91歳になる元銀行員男性の遺体が死後5年ほど経って見つかったケースでは、同居していた無職の長女(58歳)が、元銀行員名義の口座に振り込まれる年間約180万円の厚生年金や16万円余りの給付金を受給していたと報じられている。
9月2日付の共同通信によれば、「長女は同市に転居してから約30年間、生活保護を一度も申請せず、父親の年金を頼りに暮らしていたとみられる」「近所の人によると、長女はあまり外出せず、自身の仕事の収入はなかった」という。
地元で取材している記者に聞いてみても、やはり「この家庭の生活実態は、ほとんどなかったようだ」と話していた。
一連の問題の発端となった東京都足立区の111歳とされる男性が白骨化遺体で見つかった家庭は、雨戸を閉め切った2階建て住宅に中高年の4人が生活。男性が生存しているように装い、遺族共済年金915万円を不正受給していたとして、81歳の長女と53歳の孫が詐欺容疑で逮捕された。
8月28日付の毎日新聞によると、この家族も近所付き合いがほとんどなく、「町内会の集まりに顔を出したこともないし、道で会っても目を伏せるだけだった」「人を寄せ付けない雰囲気があった」という。
「引きこもり」を隠そうとするために
家族までもが地域から孤立していく
これらのニュースを目にしてきて、ふと気づいたことがあった。
当連載でも指摘してきたように、最近、内閣府の報告などによって、「引きこもり」の中核層は、コンビニや図書館などに出かけたり、趣味の用事のときだけ外出できたりするのに、社会や人とはつながることのできない人たちであることが新たにわかってきた。