ニューヨークで活躍する日本人弁護士は、世界の敏腕弁護士とどう渡り合っているのか?ニューヨーク州弁護士の大橋氏が自ら実践している「交渉の絶対セオリー」を紹介する。第4回は、自分の主張を相手に受け入れてもらう、とっておきの方法を伝授。これなら交渉上手もとっさには反論できなくなる!?

「あなたの言うとおりです。
だからこそ〜です」と伝える

 当たり前のことだが、人は自らの意見に反論できない。自己矛盾におちいるからだ。

 そうであれば、相手の主張に賛成しながら、その主張を自分の有利な方向へ導いてみてはどうだろう。相手はすぐには反論できなくなる。

 クライアントが脳腫瘍の手術用機器の事業を売却しようとしたときのこと。こちらが120億円で事業を売ると伝えたところ、交渉相手のオファー金額は23億円と大きな差があった。

 そこで私たちは「この機器はちょっと改良を加えれば、近い将来、脊髄の手術にも使えるようになる。さらに売上げと利益のアップが見込めるのだから、売却額はもっと高くなるはずだ」と、全米での脊髄手術の件数などを示して主張した。

 しかし相手は「将来のことはわからない。いまは脳腫瘍の手術にしか使えないのだから、その件数をもとにして価値を算定するしかない」と言う。

 こうした状況では、ついつい「それは間違っている。将来の脊髄手術での価値も認めろ」と反論したくなる。しかし、パートナーのジェフは違った。