45万部突破の人気シリーズ最新刊、『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?[不正会計編]』が7月17日に発売になりました。ヒカリと安曇教授のコンビが、今度は粉飾や横領という不正会計の問題に挑みます。その出版を記念して、同書のプロローグから第2章までを、全5回に分けてご紹介いたします。
世界有数のコンサルティング会社
丸の内の高層ビルの玄関に、黒塗りのメルセデスベンツがスッと止まった。ドアが開き、中から現れたのは、黒色のサングラスをかけたまるまる太った年齢不詳の男だった。
男の名は陳晋平。
陳はニューヨークコンサルティング日本支社が入るフロアを確認するとエレベーターに乗り込み、最上階のボタンを押した。
ニューヨークコンサルティングは、世界的に著名なコンサルティング会社だ。略してニューコンと呼ばれている。
ニューコンの受付には、ファッション雑誌のモデルを思わせる女性と、神経質そうな中年の男が待ち構えていて、陳を見るなり大げさに頭を下げた。前原譲治、ニューコン日本支社長だ。
「陳先生、お待しておりました」
「前原さん、よろしく」
陳は冷めた目でニコッと笑った。
「さあ、お話はこちらで」
前原自ら、上得意用の会議室に案内した。
部屋の中は、長細いマホガニーでできた机が置かれていて、前原は陳に皇居が見える最上の席を勧めた。
「これは、素晴らしい眺めですね。前原さん、この景色だけでもお金を払いたくなるよ」
陳は真顔で言った。
「まっ、そう言ってくださるだけで…。ここは大切なお客様だけに用意した特別な会議室なのです。陳先生はこの特別室にふさわしいお客様ですから」
前原は、うやうやしく頭を下げた。
世界有数のコンサルティング会社の日本支社長が、これほど陳に気を使うのには理由があった。
陳は巨額の資金を電話一本で動かす中国の大物なのだ。