キャッシュマシーンを手に入れたい

「実はだね」

 前原は気が進まないまま、佐山の話を聞き流した。

「友人の陳先生と会って欲しい」

「中国の方ですか」

「そんなことは聞かなくていい」

「承知しました。で、どのようなご用件でしょうか?」

「知らない。だが、悪い話ではない。あの人は桁外れの大金持ちでね。報酬はたんまりはずむとおっしゃっていたよ。まあ、その一部を私の政治団体に寄付せよとは言わんがね。ガハハハッ」

 佐山は大声で笑った。

 その二日後、陳が早速やってきたのだ。

「どうぞおかけください」

 陳はソファーに座ると、お茶も飲まずに話し始めた。

「投資対象の会社を探している。できる限り早く紹介して欲しい」

「わかりました。なにか条件はございますか?」

「オーナーとして誇りに思える会社じゃないとね。それに、将来性のある会社がいい。現金を生む『キャッシュマシーン』を手に入れたい」

 どうやら会社を単なる売買対象とは考えていないようだ。

「だいたいで結構ですので、投資予算を教えていただけませんか?」

 すると陳は不愉快そうな顔で答えた。

「10億円でも100億円でも構わない。だが投資利益率は10%以上は欲しい」

 前原はふと不安になった。そんな大金をどうすれば調達できるというのか。

「投資は陳先生の会社でなさるおつもりですか」

 すると陳は、前原の心配を見透かしたように話し始めた。

「前原さん。そのことは気にする必要はないよ。私にとって、会社も個人も同じだから。むろん、お礼はたっぷりさせてもらう。ただ、私は忙しいんだ。一週間で探してもらいたい」

 そう言い残して、陳はニューコンをあとにした。