大王製紙の不正会計疑惑が浮上している。赤字のタイ子会社の連結はずしが行われている可能性が高いことが、本誌編集部の調べでわかった。このほかにもインサイダー取引疑惑などさまざまな問題が噴出しており、その根底には現経営陣のコンプライアンス軽視の姿勢がある。

 製紙業界3位、売上高4090億円を誇る大王製紙が“暴走”を始めている。

 本誌編集部の手元にある大王製紙の内部資料。そこには、創業まもないタイ子会社が多額の赤字に陥っているにもかかわらず、あえて連結決算に組み入れていないことがうかがえる。

 会社の名は、エリエールインターナショナルタイランド(EIT)。2011年に設立され、今では大王製紙グループが85%を出資する。「GOO.N(グ~ン)」ブランドの紙おむつを製造・販売しており、近隣国に輸出もするアセアンの中核子会社で、12年2月に販売を開始した。

 内部資料によると、昨年9月20日時点でのEITの12年12月期は、スタートしたばかりということもあり、売上高16億5227万円、経常損益は11億5549万円の赤字を見込んでいる。10月下旬時点の資料でもほぼ同額だ。

 一方、大王製紙の13年3月期は、昨年11月13日時点で、経常利益80億円、当期利益195億円を見込んでいたが、今年2月12日に経常利益70億円、当期利益130億円に下方修正していた。この決算見通しも、第3四半期決算も、EITの赤字を反映させていない。利益の実質的なかさ上げだ。

 ある監査法人の幹部は、「これだけ大きな赤字を見込んでいるタイ子会社を連結からはずすことはできないだろう」と指摘する。

 日本公認会計士協会の指針では、連結から除外できる重要性の乏しい子会社の要件を明らかにしているが、そのいずれにも当たらない可能性が高いという。

「社内では15年3月期決算から、連結にする予定だった」とある大王製紙社員は声を潜める。内部資料にある、EITの中長期計画を見るとその理由がわかる。15年3月期に2億2000万円の経常黒字化を達成する計画なのだ。つまり、赤字が大きいうちは連結からはずし、少額でも黒字転換した時点で連結に組み入れるという手前勝手な方針が透けて見える。