大物政治家からの電話

 ニューコンと陳との取引は今年になって突然始まった。1ヵ月ほど前、民自党の大物政治家・佐山修三から前原に電話がかかってきた。

「友人の相談に乗ってもらいたい」

 前原は佐山からたびたび仕事を回してもらっているのだが、報酬を請求できるのはごくわずか。ほとんどはボランティアだった。

 とはいえ、いずれ総理大臣になるかもしれない大物政治家を無視するわけにはいかず、その日も慎重に言葉を選んだ。

「で、ご用件は?」

「私にとって、というよりわが国にとって重要なお方のご依頼でね」

(また始まった…)

 この政治家は二言目には、お国のために一肌脱いでくれを口にする。

(またボランティアか)

 前原はうんざりしてきた。どんな用件だろうと、はいはいと引き受けざるを得ない。前原は、受話器を耳に当てたまま、スマホのメールチェックを始めた。

「おい、聞いているのかね?」

こういう勘はとても鋭い。

「も、もちろんです…」