対象の医療機関は「在宅療養支援診療所」
常勤医師3人以上という厳しい条件も

 次に、ではどのような医療機関がこの新しい診療内容を担うのか。ここにも介護保険を見据えた発想が貫かれている。

 対象になるのは、診療所の中で在宅療養支援診療所の指定を得ているところである、病院も在宅療養支援病院(200床以下)に限定した。つまり、在宅医療へのシフトを想定して訪問診療に熱心な在宅療養支援診療所を主役にし、大病院を外した。

 ただ、その在宅療養支援診療所のなかでも、常勤医師が3人以上という厳しい条件を付けた。在宅療養支援診療所の多くは、常勤医師1人で他に複数の非常勤医師の協力を仰いで24時間対応の診療活動を行っているのが現状。3人の常勤医を確保するのは相当の組織力が必要だ。「一国一城の主」という意識が強い医師が3人集まるのはそう容易いことではない。この条件満たして名乗りを上げる診療所は全国でわずか300前後と言われている。これでは折角の大改革の先陣となるか疑問だ。

「主治医」を広めたい厚労省
「かかりつけ医」を推す日本医師会の対立

 もう1つ、厚労省の変革への思いがこの制度に込められている。新しい地域包括診療の担い手を「主治医」と呼び、「主治医機能の評価」と謳う。日本医師会の唱える「かかりつけ医」を無視した。「かかりつけ医は病気の数ほどいる」という日本医師会の考え方に対抗したと言えよう。

 実は、かかりつけ医は日本医師会が作った独自の用語である。なぜ、それが生まれたのかの経緯を振り返ると、医療制度をめぐる壮烈な「戦い」にぶち当たる。

 40年ほど前のこと。厚労省(当時の厚生省)は、健康管理を含む全人的な医療を手掛ける医師として「家庭医」の制度化を目論んだ。家庭医は現在のイギリスを始めオランダやオーストラリアなど先進諸国で定着している制度だ。現地ではGP(General Practitioner)と呼ぶ一次医療。内科だけでなく外科や精神科、皮膚科、産婦人科など歯科を除くあらゆる疾病の診療を行う専門医である。

 GPの国家試験を経て独立開業するが、最近では3~5人の医師で一つの診療所を構えるようになった。病床を持たないので、もし、手術が必要な患者であれば二次医療の専門病院に送る。そこでも対応が難しいと大学病院などの三次医療で診る。イギリスやオランダでは患者の95%前後が一次医療のGPで診療を済ませており、とても効率的なシステムと言えるだろう。

 そして厚労省は、この家庭医を日本に持ち込もうとした。1987年4月、厚生省が設けた「家庭医に関する懇談会」が、住民に身近な地域密着の家庭医を計画的に育成すべきだ、という報告書を2年がかりの議論の成果としてまとめた。そこで示された家庭医は、①よくある病気やけがを初期治療(プライマリケア)し ②健康相談・指導に応じ ③患者の家庭環境を熟知して全人的に接し ④いつでも連絡がとれる―――とした。

 先の地域包括診療料で示された診療内容とほとんど変わらない。