新規事業として小粒と感じるかもしれない。だが、キヤノンの狙いは深遠である。現状は自動車部品などサイズが大きいものしか認識できないが、“眼”とロボットの精度を高めていくことで、活躍の場はさらに広がる。

 キヤノンがもくろんでいるのは、より小型の機器の組み立て──。すなわち、主力のデジカメ製造自動化の実現である。

「かなり難しいが、カメラの自動組み立てにチャレンジしたい。その先にある究極の目標は、スマホ組み立ての自動化」(生駒副社長)と夢は膨らむ。

 さらに、水面下では組み立てとは別工程での活用も模索している。画像認識技術は良品を見分ける用途と相性が良いため、検査装置への応用も期待できるという。このように、ロボットの“眼”の活用例を広げていくことで、「2000億円の事業を目指す」(生駒副社長)と鼻息は荒い。

 産業向けでは、設計現場への応用が期待できるもう一つの事業がある。現実世界の映像にCGデータを組み合わせて表示するMR(複合現実)の技術だ。1月にMR事業推進本部として独立させた、期待の事業である。

 ヘッドマウントディスプレイ(HMD)の人間の目線の位置に取り付けたビデオカメラの映像に、3次元のCGを重ね合わせ、リアルタイムで表示する。HMDを掛けるだけで何もない部屋に、実物大のバイクや車がまるでそこにあるかのように見える技術だ。

「撮影した映像とCGを一体化して表示する部分にレンズ設計技術を応用し、他社にまねのできない小型・軽量化を実現した」と野口秋生・MR事業推進本部長。

 視線を変えれば、CGのバイクを上下左右、あらゆる方向や高さから見ることができ、CGなので色や形といったデザイン変更も素早く、かつ低コストで可能だ。

 システムの価格は1000万~2000万円。キヤノンITソリューションズの新井三鉉・MR事業部長によると、これまで31の企業や研究機関に販売し、約半数が製造業という。当面は大手製造業365社への営業を続けるが、製造業の設計現場以外で、思わぬ活用法も現れた。