「しかし、なんのための審査部なんです。我々営業第二部は、資本系列の大企業を主要取引先として──」
「それ以上はいうな。君のいいたいことはわかっている」
内藤は、半沢を遮ると眉間に縦皺を刻んだ。「いまは組織を論じるタイミングではない。大袈裟ではなく、帝国航空の再建は、当行にとって最重要課題のひとつだ。最善を尽くすために、最善の人選を行う。これ以上当たり前の経営判断がほかにあるか」
押し黙った半沢に、内藤は続ける。「同社の資金繰りは、来夏に向けて綱渡りになることが予想されている。ちなみに前回の融資だが、本来同社が取引銀行に申し入れたのは総額二千億円の長期資金だった。ところが、業績が計画を下回っているという現状もあって、銀行全体で調達できたのは半額の一千億円の、しかも短期資金に止まっている。しかもその八割は政府保証付きだ」
「どうせなら、最終的に政府が救済すればいいのでは」
憲民党政権が帝国航空救済に重い腰を上げたのはこの六月のことで、融資に対する政府保証はその一環だろう。逆に、短期の資金ですら、政府保証を付けないと借りられないぐらい帝国航空の業績が悪化しているということになる。
「残念ながら現憲民党政権は末期で、衆議院解散も時間の問題だ。選挙を視野に入れている以上、公的資金の投入は簡単ではない。いや、はっきりいうと不可能に近い」
内藤はいった。
「まあたしかに、あの帝国航空ですからね」
半沢の嫌味に、内藤はおもしろくもなさそうに体を背もたれに戻した。
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