上司である営業第二部長の内藤寛に呼び出された半沢直樹。業績不振の帝国航空を半沢に担当してほしいとのこと。本来であれば審査部で担当するのが妥当なはずだが、頭取の意向もあり、営業第二部で担当することになったが――。
「物流部門のテコ入れを目指してるんだろう。帝国航空に出資して関係を強化すれば、空輸部門で”商事”の体制は盤石になる」
たしかに、商事が帝国航空との関係を模索しているとの噂はあった。だが、実務担当である半沢たちが、その話を具体的に持ちかけられたことはない。もっとも、業務内容によっては時に競合相手となる商事のことだ。カネに絡むことだからといって、常に銀行に相談を持ちかけてくるわけでもない。
「商事が出資をするのは勝手ですが、ウチが出資候補先の帝国航空まで面倒を見る必然性があるんですか」
疑問を呈した半沢に、内藤は、「必然性はないな」、とあっさり認めた。「ただ――諸般の事情がある」
椅子の背から体を離したとき、内藤の表情はふいに引き締められていた。「まず、君も知っての通り、帝国航空の業績不振は著しい。今年八月に新たな再建計画を発表したばかりだが、実はすでに計画の達成が難しくなっている。それと関連することだが、短期間のうちに資金繰りが悪化する可能性もある」
「当行に支援要請は」
「いまのところはない」