頭取命令により経営再建中の帝国航空を任された半沢直樹が、500億円もの債権放棄を求める政府の再生タスクフォースと激突する。
巨大権力相手に、史上最大の倍返しとなるか?
発売3日で発行部数が55万部に達した大人気エンタテインメント小説『銀翼のイカロス』、序章の一部を公開!
妙子へ。
四十年間、支えてくれてありがとう。
苦しいときも悲しいときも、一緒にいてくれた。
夕べのご飯、うまかったよ。
ずっと君の手料理を食べて、笑って暮らしていけたらどれだけ幸せだったろう。
本当にずっと、ずっと、そうしていたかった。
早紀へ。
いまでも目を閉じると、子どものころのお前が浮かぶ。かわいらしくて泣き虫で、おてんばだった。公園でいじめっ子に会うと、一目散に私のところに走ってきて背中に隠れていたっけ。その思い出は、私にとってかけがえのない宝物だ。
私はいなくなるが、これからも美しく、凜として生きなさい。そして優しく賢い母になれ。生まれてくる赤ちゃんを、一度、この手で抱きたかった。それだけが心残りだ。敏夫君と幸せに暮らせ。寂しがり屋の母さんを、頼む。
職場の諸君。長きに亘り、お世話になった。
銀行という戦場で、日々業務に邁進できたのは、皆さんのご指導、ご鞭撻のお陰だ。
与えられた職務を途中で放り出すことは、慚愧に堪えない。
だが、あまりにも私は疲れてしまった。
新銀行の将来が、夢と希望の光に満ち溢れんことを、心から祈念する。
牧野 治