LED(発光ダイオード)を採用した製品が大ブームとなっている。今年3月、韓国サムスン電子が液晶パネルのバックライトに、CCFL(蛍光管)の代わりにLEDを採用した「LEDテレビ」を投入すると、競合他社が雪崩を打って参入、照明分野でも各社が続々と新製品を投入している。市場のにぎやかさの裏では、熾烈なLED争奪戦が繰り広げられている。(取材・文/『週刊ダイヤモンド』編集部 前田 剛)

 「またサムスンに先を越された」──。大手電機メーカー幹部は焦りを隠さない。韓国サムスン電子にLEDチップの調達で先手を打たれたからだ。

 今年4月、サムスン電子はグループ会社と共同出資でサムスンLEDを設立、LEDチップの自社生産に乗り出した。加えて、「(台湾最大のLEDメーカーの)エピスターのチップ生産枠の大半を押さえてしまった」(業界関係者)。

 サムスンLEDは当初、韓国LG電子向けの外販も行なっていたが、ここにきてサムスン電子向けのLEDチップ確保を優先し、LGへの供給を止めた模様だ。

 サムスンがかき集めているのはLEDチップだけではない。その製造装置も買い占めに走っている。

 年間生産台数が約150台といわれる市場で、なんと100台の製造装置を確保したとうわさされている。まさに手当たり次第だ。

 なぜ、サムスンはLEDの確保に狂奔するのか。理由はただ1つ、LEDテレビなどLEDを採用した製品の市場が急拡大しており、LEDを押さえた者が市場を制すると考えているからだ。

 今年3月に同社が投入したLEDテレビは、奥行き約1インチという薄さと、従来比最大40%の低消費電力を武器に、着実に販売を伸ばしており、2009年は当初の販売目標である200万台を達成する見込みだ。10年には1000万台の販売を目指している。

 次ページのグラフで示すように、LEDテレビは09年の約230万台の市場規模から右肩上がりで急拡大し、13年には約8700万台と、液晶テレビ全体の42%を占めると予測されている。