新たなアイデアを出すと地方オフィスへ飛ばされる!
常務の嫌いな歌を歌うと営業所へ左遷させられる!

 この例だけではない。「常務が示す方針に対して、新たなアイデアを出し続けた課長が、常務から『頼むから自分の指示したとおり、何も変えずにやってくれ』と言われ、あげく地方オフィスへ異動内示を受けたが、それを拒否して退社した」「常務に目をかけられ、常務の女友達との宴席に同席させられた課長がその席で酔って粗相をし、他部門へ異動させられた」「常務の嫌いな歌をそのスナックのカラオケで歌った社員が、次の定期異動で営業所へ異動させられた」など、好き嫌いで行われたと社員に思われる人事異動が横行していた。

 むろん、他の社員からはうかがい知れぬ他の異動理由があったかもしれぬ。しかし問題なのは、多くの社員から、この会社の人事異動の理由が、このように思われているということ自体だ。

 あげくの果ては、宮田常務派閥に属する社員を昇格させるために、その社員は昇格基準に満たぬ評価順位であったにもかかわらず、その社員より上の順位の社員をこぞって昇格させるという荒業により、誰が見ても不自然な昇格を作り出した場面に、私は出くわした。オトモダチ異動以外の何ものでもない。この手の話は、残念ながら日本企業では決して珍しいことではない。

人事異動の目的はキャリア開発
オトモダチ人事が余剰シニアをつくる

 企業における人事異動の目的とは何だろうか。私は体験的には、個々の社員のキャリア開発、社員やチームのモチベーション向上、そして組織全体の人材資源の組み合わせの最適化だと考える。

「部門から引きがあるから、人事異動が実現する」「昇格、異動したければ、他部門から引かれるような人材になれ」――異動に関して、よく言われるフレーズだ。

 他部門から引かれることは、決してオトモダチであるからではなく、能力や経験を評価されてのことでなければならない。他部門からその個人に対する引きがあるくらい、個人が部門のビジネスニーズを満たす能力や経験を有しているかということが重要だ。そのことが、本人のキャリア開発につながる。そして、このキャリア開発の面は、わが国企業で、あまり考慮されていない点で、この欠落が、シニア層や高齢者の雇用問題の元凶になっていると考える。

 極論すれば、オトモダチ異動を繰り返した挙句、能力開発がされていない、シニアと呼ばれるようになって、ハタと気づくと、自身の能力がビジネスニーズにマッチングされておらず、余剰人員としてカウントされてしまうという帰結である。