衰退する企業と、輝き続けるビジョナリー・カンパニーの違い

 では、ビジョナリー・カンパニーの真実の姿とは一体どのようなものでしょうか。コリンズたちは時代を超える生存の法則として、次の8つを描き出しています。

【ビジョナリー・カンパニーの8つの生存の法則】
(1)製品ではなく企業そのものが究極の作品と考える
(2)現実的な理想主義
(3)基本理念を維持し、進歩を促す
(4)社運を賭けた大胆な目標
(5)カルトのような文化
(6)大量のものを試して、うまくいったものを残す
(7)生え抜きの経営陣
(8)決して満足しない

 本書では「8つの生存の法則」は、大きく次の3つに分類できると考えています。

(1)製品ではなく企業そのものが究極の作品と考える

 ビジョナリー・カンパニーを率いるCEOにとって「究極の作品」とは、企業そのものであり、素晴らしい製品をつくるよりも「素晴らしい製品を生み出し続ける企業」をつくることに熱意を注ぐ。その姿は、時を告げる「時計をつくる職人」に似ている。

 逆に、ほとんどの企業は現在やっていることや製品に気を取られ、それらを生み出す根本的な原動力である「企業そのもの」を最も重要な作品と考えていない。

(2)特別な会社である、という自己認識を全員で共有する

「カルトのような文化」とは、自社で働く社員に必要な資質を明確にしており、社員にその文化と一体になることを求めることです。それから外れていれば「病原菌か何かのように追い払われる」ことになります。自社は特別な会社だという自己認識と、社員にその特別な会社にいることを強く意識させることで、そうあり続けるために働く強い意識を持たせることができているのです。

(3)イノベーションと飛躍を計画する力を持つ

 8つの生存の法則の(4)「社運を賭けた大胆な目標」とは、米ボーイング社が1950年代にジェット旅客機をつくる計画を立て、トランジスターが誰も商売にならないと思っていた時期にソニーがラジオに活用しようとしたような、大胆で思い切った目標を掲げて追いかけることです。

 コリンズたちは「安全なところにとどまっていては、進歩を促すことはできない」という言葉を使っていますが、ビジョナリー・カンパニーは必要なときに「社運を賭けた大胆な目標」を掲げ、会社を安全地帯から飛び出させ、進歩を自ら促しているのです。

 原題が「Built to Last」であることからも、永続する企業が“繁栄を続けるため”につくられていることが、強く実感できる分析結果ではないでしょうか。