「ドンペリーニョンは、世界中にフレンチキッスをする会社」

松嶋 実は僕、ドンペリーニョンの醸造責任者と仲が良くて、二人で飲んでいるときに僕が「ところで、ドンペリーニョンってあなたにとってどういう企業なの?」と質問してみました。すると彼は「ドンペリーニョンは、世界中にフレンチキッスをする会社さ」と言ったんです。それを聞いたとき、僕はこんな企業には勝てないなと思いました。

 そこから、自分はどうなれるかを考えるようになりました。ジャパニーズキッスではありませんが、そういう感覚を持たなければいけないし、持つようにしています。だからこそ、自分は日本の代表でいられると思います。

柳川 一言できっちりと表現できることはすごいですよね。言葉の問題だけではなく、そこまで考え抜かれた戦略の方向性を持っている。松嶋さんは、フランスでフランス料理をやろうと思ったときから、日本人が出すフランス料理だということを明確にしていましたか?

海外で成功したければ“下ネタ”を覚えなさい <br />日本人を捨てず現地に溶け込む秘訣松嶋「若い頃からライバルは日本人シェフではありません。『これはおいしい!』と言わせる料理人になりたいと思っていました」

松嶋 若いときは、人として勝負できるかどうかを確かめたかった。フランス人だろうが、日本人だろうが、「これはおいしい!」と言わせる料理人になりたいと思っていて、フランスに行ったんです。自分のアイデンティティではなくて、フランス料理を作れる人間になりたいと思っていました。だからこそ、当時から自分のライバルは日本人シェフではありません。

 若い時から三ツ星レストランに飛び込むと、有名レストランのシェフの息子が働きに来ていたり、オーナーの弟が修業に来ている現場に出逢ったりするわけです。そういう人たちと切磋琢磨するなかで、彼らが仲間になります。若いときに同じ釜の飯を食っているし、同じように遊んでいました。だから僕にはフランス中に仲間がいます。

 スポーツ選手にも、なるべく若いうちに跳び出しなさい、と言っています。あの選手は若いときから知っていると言える人が増えれば、もっと上にいけるよ、と。23歳以下の若いサッカー選手には、移籍しろとも言っています。みんながスターになる前に、切磋琢磨していている時から仲良くなっていれば、もっと上にいけますよ。

※後編は9月3日(水)に公開予定です。

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