今企業は経済のグローバル化への対応に迫られているが、世論の「英語ができない日本人」というフレーズに、英語アレルギーになることもしばしば。しかし、「海外駐在経験10年、世界100ヵ国に出張」という経験を持つSBIホールディングス代表取締役CEO北尾吉孝氏は、「日本人は類稀なグローバル・スピリットを持ち合わせている民族」と断言。もしかして、日本人の優位性に気づいていないのは日本人だけなのか?前回に続き、海外経験豊富な北尾氏が日本人らしいグローバル化を語る。

外国語の前に、自国の感性と
民族の違いを理解するべき

きたお・よしたか
1974年慶応義塾大学経済学部卒業後、野村證券に入社。1978年英国ケンブリッジ大学経済学部卒業。野村證券NY拠点勤務後、英国ワッサースタイン・ペレラ社常務取締役、野村企業情報取締役、野村證券事業法人三部長を経て、1995年孫正義氏の招聘でソフトバンク入社、常務取締役就任。2005年、SBIホールディングス株式会社代表取締役CEOとして現在に至る。

南 豊富な海外経験を振り返って、今日本人が身につけるべき国際性は何だと思いますか?

北尾 私は海外に10年住んで、世界100ヵ国に出張しました。その経験を通して感じたことは、国際性とはまず、違いを理解できることに始まると思うのです。自分が日本人として海外で誰かと出会う時、その二者は“違う”わけです。生きてきた文化背景も違えば、風習も違う。民族的特質が異なっています。大切なのは、それを片方から見て「良い・悪い」と判断せず、「自分とはこういう点で違っている」と理解できることです。そうすればそこにコミュニケーションが生まれます。

南 なるほど、日本人としての視点も持ちながら、二者の真ん中に立って互いを見ることができる、ということですね。

北尾 そうです。そしてもうひとつは、互いに違う存在でも、人間性には変わりがないということを知ることです。肌や髪の色が違って、話す言葉が異なっていても、人間は大体同じことに喜び、怒り、哀しみ、楽しみを覚えます。つまり人間性には普遍性があるということです。

 最初の違いの部分から例を挙げて説明をしましょう。日本の製造業は、まさに日本人のものづくりの感性が世界に理解された例です。日本のデパートに行けば、商品を丁寧に包んでくれます。この日本の包み紙とその包み方は、世界で最も美しいと言えます。こうした日本人の美的感覚ときちんとものを作る完璧主義に支えられたクラフトマンシップが製造業に生き、ある時代には圧倒的な地位を世界に築いたのです。