2012年に開店からわずか1年強で、『ミシュランガイド フランス』で一つ星を獲得した「フランス レストラン ソラ」。吉武広樹シェフに「どうやって海外に出ていき、どうやって成果を上げたのか」『なぜ、日本人シェフは世界で勝負できたのか』著者の本田直之氏が、インタビューします。
世界を放浪して見つけた「やりたいこと」
レストラン ソラ / Restaurant Sola 12 Rue de l'Hotel Colbert, 75005 Paris, France Tel +33 01 43 29 59 04 http://www.restaurant-sola.com/
海外でミシュランの星を取っている日本人シェフを、3人も輩出しているレストランがあります。それが「料理の鉄人」でもおなじみ、坂井宏行シェフの「ラ・ロシェル」。そのうちのひとりが、パリのフレンチ「レストラン ソラ」の吉武広樹シェフです。彼は、福岡の調理師学校を出たあとラ・ロシェルに入ります。3年働いたあと、ラ・ロシェルから独立したシェフがつくった「ル・ピラート」でまた3年、合計6年の修業ののち、1年間バックパッカーで世界を放浪しました。
「アジアからインド、ネパール、エジプトと中東をへて、そこからヨーロッパを回ったあと、アメリカに渡り、そこで1年ぐらい経ってしまったので日本に戻りました。いろんな国を回って思ったのは、フランス料理の偉大さ。やっぱり細かいし、深いし、自分のやりたいのはフランス料理だというのを再確認して、学生ビザを取ってパリに行ったんです」
海外に出てみて、本当にやりたいことが何なのか気づくことができた。しかし、料理人として海外に修業に出る人が多いなか、放浪することに焦りはなかったのでしょうか。
「そのときは、すごくいい毎日を送ってたので(笑)。包丁とか、調理道具一式を全部持って歩いていて、泊めてもらう代わりにゲストハウスのキッチンを手伝ったり、日本料理を教えたり。旅の途中で出会った人の結婚式の料理を任されたりもしました。バックパッカー仲間にも、『料理人はいいな、どこに行っても食いっぱぐれないし』って言われていたくらい。1年間海外で働いても、そんなに毎日、新しいものを得られるわけじゃありませんよね。でも、そうやって旅をしてると、もうまったく違う毎日なので」