2015年から開始の相続税改正を受けてにわかに注目されている「相続」。人の死とお金がからんで、相続関連のトラブルが深刻化し、さらに年々増加しています。「モメるほどお金を持っていない」とか「うちは兄弟仲がいいから大丈夫」、そう思って何も準備していない家庭ほど余計なトラブルを背負ってしまうことも多いもの。後悔する前にまずどんなことでモメるのか、そして解決策を知っておきましょう。
今回から、書籍『ストーリーでわかる!今までで一番やさしい相続の本 ――得する節税と相続トラブル回避法』を監修し、相続税の専門家である税理士法人チェスターの荒巻さんに、相続時にありがちなトラブルと解決のヒントを教えてもらいます!
自分のお金であり、自分のお金でない!?
相続を行う際、亡くなった人(被相続人)の相続税の「課税対象になる資産」は、預貯金や株式などの有価証券、土地建物、生命保険、死亡退職金といったものです。
被相続人名義の財産を申告するという認識は正しいのですが、ここで気をつけなければならない点がひとつ。相続人の名義のお金であっても課税の対象になる場合があるということです。つまり配偶者(遺された夫や妻)や、子ども名義の預金が相続税の対象となってしまうことがあるのです。
よくあるのは、妻がこっそり“へそくり”を貯めていた場合です。妻名義の預金口座にありながらも法律的には夫の財産とみなされてしまう。妻にとっては、がんばって貯めたのに自分のお金ではないなんて相当ショックですよね。
これはどういうことでしょうか。
税務調査ではお金の出所を重視
みなさんは亡くなった人(被相続人)の名義でないお金は問題ないと思っているようですが、実は相続税の税務調査が入って一番に指摘されるのが相続人名義の預金です。
相続の税法上では、誰の名義であるのかはあまり関係がありません。それよりもその財産を誰が作り出してきたかを非常に重要視するからです。
ですから、特に専業主婦は要注意。自分の収入がないのにへそくりがたくさんあると、税務調査で確実にチェックされます。
税務調査員が「妻の○○さん名義の預金口座に1000万円ありますが、このお金はどうやって作られたのですか?」と必ず確認してくるのです。
妻「月々の生活費から少しずつ貯めたへそくりです」
調査員「へそくりは、夫の××さんの収入から得たお金ということになります。資金源は××さんなので、あなたのお金ではありません」
妻「!!」
ということで、妻がいくら「コツコツ貯めてきたのは私です。本来なら生活費として使ってしまうところを、何とか切り詰めて捻出してきたのです。だから私のお金じゃないですか!」と懸命にアピールしたとしても、そのお金を稼いだのは夫なので、夫の財産として計上されてしまうのです。
ちなみに税務調査が入ってから夫の財産として判断されると、「所得隠し」としてペナルティを課せられる可能性もあります。
まさか私の貯金が対象になるなんて…という気持ちはわかりますが、国税庁には預金取引の履歴や所得税の確定申告データ、資産譲渡の記録など、過去のお金の流れを把握できるシステムがありますので必ずバレてしまいます。必ず遺産として計上しましょう。