自分で作ったお金なら問題なし

 8月に発売した『ストーリーでわかる! 今までで一番やさしい相続の本 (得する節税と相続トラブル回避法)』では、生前の相続対策がストーリー仕立てで展開し、さまざまなトラブルを解決していきます。
 この本の中に登場する、夫が余命半年と告げられた妻のアキ子さんも、自分がコツコツためてきた自分名義の預金がが夫の財産になると知ってショックを隠せませんでしたが、最後には納得し夫の遺産として相続を行います。

 もちろん、妻のお金は全部夫の財産になるというのではありません。
 もともと自分で作り出してきたお金、例えば結婚前に貯金していたり、パートで働いたり、年金をコツコツ貯めたり、親の遺産を相続したお金などは100%認められます。
ポイントは、亡くなった人からもらったお金ではないと判断できることです。

 それにしても、がんばって貯めたのに夫のお金にされるなんてあんまりだと思う人は多いでしょう。
 そこは税法も「配偶者に認める税額軽減の特例」という救済措置を用意しています。へそくりは故人の遺産にカウントしますが、配偶者の税負担は軽くしましょうというわけです。

 具体的には、配偶者が相続する財産1億6000万円まで税金が免除されます。この特例を受けるには、最初にきちんと申告しておくことが大切です。税務調査が入った後に発覚するとこの特例が使えなくなる可能性もあります。

 ちなみに、相続税はトータルの財産をもとに計算しますから、妻のへそくりがあるとその分だけ相続財産は多くなり、相続税も増えます。

税務調査が入るのは約3割

 申告漏れを厳しく指摘してくる税務調査ですが、申告者全員に調査が入るわけではありません。
 実際に調査対象となるのは相続税を納税した人の約3割で、そこで申告漏れを指摘される人は8割以上と高い確率になっています。
 つまり調査する側も闇雲にあたるのではなく、ある程度の目星をつけて狙い撃ちしてくるということです。

 まず税務調査が目を付けるのは、先程も述べたように配偶者や子ども、孫などの名義の預金であっても、実質的には被相続人から拠出したお金であると推察される場合です。
 それから、相続開始から過去3年間に生前贈与したお金も相続財産の対象になります。贈与においては年間110万円の非課税枠が設定されていますが、この間に贈与されたお金は非課税が無効となり、相続財産に持ち戻して申告しなければなりません。
 また相続直前に引き出した預金などもしっかりチェックされますので、最初にきちんと納税申告をすることが肝心です。そうすれば後で税務署からとやかく言われることはありません。