東京23区で増加する
アパート併設の二世帯住宅

 東京都新宿区の閑静な住宅街に堂々と立つ一軒家。建物は古いが、歴史を感じさせる威厳があり、目の前に広がる庭も立派。150坪程度という広大な敷地は先祖代々引き継いできたものだ。

 そんな豪邸が、今年に入って大きく姿を変えた。住宅は二世帯住宅へと建て替えられ、庭には二階建ての賃貸アパートまで建設されたのだ。

 実はこの住宅に住む60代の男性は昨年末から、あることに頭を悩ませていた。

「このままいくと、自宅以外の土地も含めて1000万円以上の相続税が課されることになり、息子や娘たちに迷惑をかけてしまいかねない……」

 2013年度の税制改正で、相続税の「基礎控除」が15年から縮小されることが決まった。

 これは、課税対象となる相続財産の評価額から差し引くことができるもので、現行の「5000万円+1000万円×法定相続人数」から、「3000万円+600万円×法定相続人数」に縮小される。これに伴い、相続税が一気に膨らんでしまうことを心配していたのだ。

 そんな折、住宅メーカーからある提案がなされた。

「家も古くなってきたことですし、この際、二世帯住宅に建て替え、特例を使って相続税対策にしましょう」

 財産を相続した人が多額の相続税を支払うために自宅を手放すような事態に陥らないよう「小規模宅地特例」というものが定められている。

 宅地のうち240平方メートルまでの部分については土地の評価額を80%減額するというもの。それが今回の税制改正で330平方メートルまで認められることになったのだ。