ジェイク・
ソロフマン
ガートナー リサーチディレクター

 デジタルマーケティングで顧客を感動させるために必要なのは、顧客がブランドを認知する特別な瞬間だ。この瞬間は、優れたマーケティングのあるべき姿を気づかせてくれるし、顧客をインスパイアしたり喜ばせたりする。ウィットや感情で顧客を驚かせる一方で、結局のところはあらゆるものが必ずしも同一ではないのだと気づかせてくれる。さらにそのような瞬間は、インターネットが単なる一つの巨大な商品取引所ではないのだと再認識させてくれる。顧客ロイヤルティや私たちの主張は、依然としてクリエイティブな表現や思慮深い振る舞いから得られるのだ。

 ただし、顧客に感動を与える瞬間を提供する前に、企業はブランドの基本的な約束を果たす必要がある。ポーカーにたとえて言えば、これはゲームを始めるためにテーブルに賭け金を置いた段階にすぎないのだ。企業が自社の主張に沿えない場合、つまり顧客の基本的な期待を満たせない場合は、その企業には一銭たりともマーケティングにお金を使う資格がない。それはなぜか?顧客の企業と接する一つひとつの「真実の瞬間」が、かえって顧客の失望をもたらすばかりか、その失望感は喜びの感情よりも早く、はるか彼方まで拡散するからだ。

 つまり、企業が自身の約束を果たせない場合、マーケティングが結果的に企業の信頼を損ねるだけになってしまうおそれがあるのだ。

 しかし、ひとたびこの関門を突破すれば、顧客に感動を与える瞬間が、その企業のブランドを優位に立たせる。多くのブランドの選択肢がある中、これがちょっとした強みになるのだ。

 では顧客を感動させるデジタルマーケティングとは、具体的にはどんなことだろうか?考慮すべき6つのパターンを次に挙げよう。