ここ数ヵ月、中国で多くの多国籍企業が独占禁止法違反で調査されたことは、広く注目されただけでなく、外資企業には様々な憶測をも引き起こしてしまった。それはなぜなのか。次はどうなるのか。果たして、中国は外資を歓迎しなくなり、外資を排除するのか。筆者としては今後、独占禁止法の執行を強化することが次第に常態化し、外国企業も国内企業も積極的に摘発していき、独占禁止関連の調査は、「縦方向の独占」を中心に行われていくと見ている。(在北京ジャーナリスト 陳言)

「過去の借り」を返す

 中国の「独占禁止法」は2008年8月に実施され、具体的な執行は商務部、国家発展改革委員会(発改委)と国家工商行政管理総局(工商総局)がそれぞれ担当している。最初の数年間、発改委と工商総局は価格分野にしろ、非価格分野にしろ、大規模な独占禁止調査を積極的に実施することはなかった。2012年の年末及び2013年の年初に、韓国などの液晶パネル、中国の高級酒である茅台・五粮液の価格操作案件を皮切りに、発改委は「本腰を入れる」ようになった。工商総局では、地方工商部門に権限を与えていくつかの独占案件を処理したが、最近のマイクロソフトに対する調査(「マイクロソフトに宣戦布告」8月12日を参照)までは、全国に影響を与えるような大きな事件はほとんどなかった。

 この数年間、独占禁止調査が「無」から「有」に、「少」から「多」になっているように感じられるからといって、過去に独占行為が存在しなかった、あるいは現在、法の執行者が権力を濫用していることを意味するものではない。独占禁止法という新たな法律に対し、執行機構はこれまで一定の時間を置き、市場主体が自主的にその行動を改正していくことを待つという意向を持つ一方で、自身も専門知識を蓄積し、執行経験を積む時間を必要としていたと思われる。法施行から6年目の今日、執行機構は全面的に独占禁止法を執行する意欲も能力も持つに至ったと理解した方がよい。

 ある意味では、執行機構は「過去の借り」を返しており、法律の執行が常態化する状況に入っただけである。

競争政策を取り入れた中国

 さらに深く見ると、独占禁止法執行の強化は、中国が現段階で経験している経済管理パターンの改革と切っても切れない関係にある。中共第18回三中全会において、資源を配分する市場に決定的な役割を確保させ、資源に対する政府の直接支配を大幅に減少させると同時に、「公平な競争を確保し、市場への管理を強化し、市場秩序を維持する」という政府の役割をさらに発揮させなければならない、とされた。