いま中国政府は外資企業による市場独占に関する調査を強化している。日本企業はあまり目立たなかったが、腐敗に直接に関わっていた欧米企業は、一般市民の顰蹙を買っている。欧米系のブランドは、関税を考慮しても、中国では価格を不当に高く設定していると見られている。7月からその価格設定について、国家発展改革委員会(発改委)が調査に乗り出している。中でも注目は、これまで蜜月関係にあると思われていたマイクロソフトと中国政府の大バトルだ。(在北京ジャーナリスト 陳言)

部品を40%値下げした自動車メーカー

 7月からメルセデス・ベンツ、ジャガー、ランドローバー、アウディなどの自動車メーカーが部品の値下げを発表した。下げ幅は、40%にも達している。国家発展改革委員会が、部品が異常に高いことについて調査に乗り出したいと発言をしただけで、高級輸入車企業が一斉に部品の値下げをしたのだ。

「政府の棍棒が振りあげられる前から、外資ブランドはすでに自分で自分の顔を殴りつけ、大声で『私は罪深い』と叫ぶようになった」と中国のインターネットでは、このようなジョークが広がっている。

 発改委はそれ以前にも、アメリカの製薬企業や同じくICチップ製造企業である高通(クアルコム、Qualcomm)社を取り調べている。自動車部品の分野でも同様、発改委に何らかの動きがあると思われていた。アウディでは、AL6タイプの車の部品の販売において、値下げ前の価格は新車に使われる部品の4倍に当たるという。アナリストの分析によれば、世界中のどこでも、部品は新車の3倍程度の価格であるという。値下げは利潤幅を減らすものであり、影響も大きいだろう。

 ある企業が関連する試算を行った。アウディの部品販売は、中国での売上比率が5%としても、今回の値下げだけでも恐らく4億ユーロ(約5.37億ドル)の影響を受けることになるという。これは、フォルクスワーゲン・グループの2014年純利益の5%にも相当するかもしれない。2014年のフォルクスワーゲンの純利益は、おおよそ81億ユーロと考えられている。

 しかし、科されるかもしれない罰金を待っているのではさらに大変だろう。2008年に実施された中国の独占禁止法によれば、価格決定の権利を濫用した企業に対しては、その企業の売上収入の10%の罰金を科すことになっている。それに照らせば、アウディが罰金を科される場合、その金額はおそらく50億ユーロ(約67億ドル)にものぼることになるだろう。にもかかわらず、どの企業も急速に成長している、中国の輸入車市場と仲良くやっていきたい。マッキンゼーは、中国は2016年に世界でもっとも大きな高級自動車市場になると予測している。