「米国側との感情のもつれが最後まで尾を引いた──」(レックス・ホールディングス幹部)

 コンビニエンスストア業界2位ローソンによる同7位エーエム・ピーエム・ジャパン(am/pm)買収が白紙撤回された。責任の一端はam/pmの親会社であるレックスにある。買収後の「am/pm」ブランド維持に関して、商標権を持つ米エーエム・ピーエム・インターナショナルの合意を取り付けられなかったためだ。

 これには伏線があった。2月末の買収発表記者会見の席上、新浪剛史・ローソン社長が、am/pmオーナーの要望があれば「ナチュラルローソン」などに変更する「マルチブランド戦略」を進める方針と述べた。商圏の環境に応じて店舗フォーマットを変える戦略に、同社は業界内で最も積極的に取り組んでいる。しかし、それは米国側にブランド価値が低下すると映った。

 この戦略についてam/pmとローソンで共通認識はあったが、ブランド価値を維持したい米国側の神経を逆なでしてしまった。ここで生じた感情のもつれが後の交渉に大きく影響したとレックス幹部は証言する。

 合意へ向けてレックスは交渉を続けたが、米国側はブランド価値が維持できないならば、多額の補償金を請求すると表明。経営再建中のレックスにとって、それはできない相談だった。

 また、「2007年にレックスがMBOをして実質ファンド傘下となるなど、意思決定者が何度も代わったことでam/pmの方向性が定まっていない。米国側との意思疎通も十分にできていないから交渉が決裂して当然」(am/pm幹部)との声もある。

 迷走するam/pmの価値は落ち、売却はますます難航しそうだ。

(『週刊ダイヤモンド』編集部  片田江康男)