オバマ米大統領は1月14日に金融危機責任税を発表した。TARP(不良資産救済プログラム)の支出を米政府はこの税金で回収しようとしている。

 11月の中間選挙を控えたこの時期に、「金融業界に投入した税金は、金融業界に返済させる」というメッセージは、有権者にはわかりやすい。

 昨年8月時点で米政府はTARPのコストを3410億ドルと見込んでいた。その後、米大手金融機関が注入資金の返済を進めたため、現時点ではコストは1170億ドル程度と予想されている。

 金融危機責任税の対象は、米国内で500億ドル以上の資産を持つ銀行、証券会社などである。それら企業の負債(FDICの保険料の対象となる負債は除く)に対し、15ベーシスポイント(0.15%)が課税される。

 「米国版奉加帳方式」と見なせるこの金融危機責任税は、毎年90億ドルの税収が見込まれている。TARPのコストを回収するには、12年以上かかると米財務省は試算している。

 年間90億ドルという納税額は、米国の大手金融機関の収益に比較すれば大きな比率ではない。また、銀行の商業貸し出しのように調達コストに数百ベーシスポイントの利ザヤを乗せている取引であれば15ベーシスポイントの負担はあまり重くない。しかし、米短期金融市場にとっては深刻な打撃になりうる。