【その1】
ルーチンワークに
クリエイティブな仕事を駆逐させるな!

 ピラミッド型組織というのは、ルーチンワークをこなす上では非常に有効な組織だ。人類が発明した最高のイノベーションの一つだと言ってもいい。

 ただ一方で、ピラミッド型組織のように固定化された組織というのは、変化に対応することが不得手だ。そこを調整するのが組織のメンバーで、超人的な努力によってなんとか変化に対応するのだが、自ずと限界がある。

 一番の問題は、ルーチンワークのある人間は、どうしても、ルーチンワークを先行させたがる傾向があるということだ。業務におけるグレシャムの法則(悪貨が良貨を駆逐する)である。すなわち、“ルーチンがノンルーチンを駆逐”してしまう。

 私もそうだ。前職の野村総合研究所で、管理職をやっていた時の働き方を例にとってみよう。出社したらすぐに、定例会議前で頭がすっきりしているうちに新規の提案書を作ろうと思っていたとする。それは、挑戦しがいのあるクリエイティブな仕事だ。その次に、明後日に迫っている、ある研修のレジメづくりをしようと思っていた……。

 ところが、この2つのノンルーチンの仕事には結局全く手をつけられなかった、といったことがしょっちゅうだった。

 出社した瞬間に、部下の「ちょっといいですか」が待っている。まさにルーチンワークで意思決定をしなければいけない用件だ。状況を聞いて判断を伝えるのに15分くらい掛かかる。

 その次に電子メールのチェックをしたのが間違いだ。多くはメール広告の類、あるいはしばらく放っておいてもいいメールだったが、中に急ぎのメールが2~3ある。確認のためのちょっとした調べものも必要で、そこまで終わった時は、もう朝礼の時間。

 朝礼はルーチンワークの宝庫だ。先週の報告と、今週の予定の確認など。時間が延びて、休み時間もなく別の定例会議に突入。終わったらまた「ちょっとお時間ください」が待っている。毎日がこんなことの繰り返しだ。

 クリエイティブワークは、ルーチンワークが終わった後にゆっくりやろうと思うから、結局、ほとんどの場合は1日の後ろへ、後ろへとリスケされてしまう。考えてみれば、これは非常におかしな習慣だ。