自分の頑張りだけでは限界が訪れる

 ひと昔前の管理職といえば、社内で決裁の判を押す、部下の指導を行う、といった「マネージャー」業務が主でした。

 ところがバブル崩壊後、日本企業はリストラと並行して管理職ポストを激減させ、組織のフラット化を促進。その結果生まれたのがプレイング・マネージャーという存在です。

 何となくカッコいい響きがありますが、経営側にとっては、利潤を生まない専任マネージャーを置くよりも、売り上げに貢献する現場のプレーヤーを管理者と兼任させたほうが、それだけ人件費が抑えられるという背景があります。

 こうして、今の上司世代は、営業などの第一線に立ちながら、管理職として部下のマネジメントを行い、さらには諸々の会議にも出席しなければならないという複雑なポジションを任されることになりました。現代の上司には、「プレーヤー」と「マネージャー」、この2つの両立が求められているのです。

 とはいうものの、数字などで個人の成績がはっきり見えやすいのは、「プレーヤー」の部分です。そのため、どうしてもマネージャー業務が手薄になる傾向があるのです。

 そもそも、通常、プレーヤーとして優秀だからこそ、プレイング・マネージャーに抜擢されます。そのため、部下に対して「自分には苦もなくできることが、どうしてできないんだ」という感情を抱きがちで、つい「教えているより、自分でやってしまったほうが早い」と一人で仕事を抱え込む傾向があります。

 その結果、さらに忙しくなり、部下の面倒を見る時間がどんどん少なくなっていくという悪循環に陥るのです。

 同情すべき点は多々ありますが、部下側からすれば「いくら大変でも部下の面倒くらい見ろよ。それが仕事だろう」というのが本音であり、また悲しいかな、正論でもあるのです。