現在、大相撲には600人あまりの力士がいて、十両以上の関取は約70人。500人以上いる幕下以下の力士は正式に給料をもらえる関取を目指して日々厳しい稽古を積んでいる。それでも大半は途中で土俵を去ることになるし、辛抱して関取になった力士でも出世に10年近くかかることもざらだ。

 その険しい道のりを逸ノ城は、高校・実業団での全国優勝という実績があり幕下付出での初土俵という恩恵を受けたものの入幕まで4場所で通過し、デビュー5場所目で大相撲の頂点である幕内優勝まであと一歩というところまで来たのだ。もしそうなれば1914年の両国以来100年ぶりの新入幕優勝だったが、日本相撲協会が発足したのが89年前だから、まさに大相撲の歴史を塗り替える快挙だったのだ。

 ちなみに史上最年少で関取になったのは元横綱貴乃花だが、初土俵から十両昇進まで10場所かかっている。また、逸ノ城同様髷が結えない状態で幕内力士になった人気の遠藤は、幕下付出デビューで十両まで2場所、入幕まで3場所。遠藤は出世のスピードでは逸ノ城を1場所上まわっている。

192センチ・199キロの圧倒的パワー
対戦する力士にとって大きな圧力

 逸ノ城の怪物ぶりは、まず巨体に表れている。今場所発表された身長は192センチ、体重199キロだが、まだ成長しているともいわれる。かつても、その巨体と圧倒的パワーで怪物と呼ばれた力士はいた。小錦、曙、把瑠都などだ。だが、彼らには弱点もあった。体型的に腰高なことと相撲経験がないことで、日本人力士でも技で対抗できたのだ。同じ外国人ではモンゴル人力士が活躍しているが、怪物とは呼ばれなかった。それは彼らが日本人と同じ低い腰を持ち、ブフというモンゴル相撲の経験を持つ者が多く、技で勝負する力士だったからだ。逸ノ城はその素養に加え、圧倒的な体躯を持っているのだ。

 なにしろ太ももの太さは92センチある。9月場所の取組を見ていても、対戦する力士とは太ももの太さがひとまわり違っていた。11日目の大関稀勢の里戦と13日目の鶴竜戦では立ち会いに変化し、はたき込みで勝った。真っ向勝負を期待したファンからは不興を買ったが、この2番は逸ノ城だからできたことだともいえる。