やりたいことがあったら、
まず飛びこんでみる

 堤さんが、アニメ映画の世界に関心を寄せるきっかけは美大3年生のときに訪れた。ディズニーの主催による、1ヵ月間のトレーニングコースに参加したのだ。もっとも、堤さんは“補欠”だった。アメリカとカナダの美大から35人が選抜されるのだが、堤さんは36番目。運よく1人がキャンセルしたため、滑り込みで参加することができた。

「講師は、ディズニーの現役アニメーターでした。その絵が、本当に素晴らしかった。僕も、ディズニーで働けば、こんなにうまくなれるんじゃないかって、希望をもったんです」

 しかし、当時すでに、ディズニーの2Dアニメは衰退しはじめていたため、卒業するときにはディズニーの求人はほぼナシ。しかも、ディズニーをはじめ、アニメーション制作を営む会社の多くは西海岸にある。そこで、堤さんは、卒業後すぐに、思い切ってサンフランシスコに引っ越した。そのときの貯金は2000ドル(20万円ほど)。仕事のあてもなく、住む所も決まってなかったというのだから無鉄砲だ。

 当時を、こう振り返る。

「サンフランスコの道でばったり会った高校時代の友人の居候させてもらって、電話帳で調べたベイエリアの映像関連会社50社に片っ端から電話をかけました。当時はインターネットも普及してませんでしたから、アテもなく会社を探すのはほんとうにたいへんでしたね」

 電話をかけては断られ、かけては断られ……。それでもあきらめずに電話をかけ続けた。すると、唯一興味を示してくれた会社があった。ルーカス・ラーニングというビデオゲーム制作会社である。なんと、もともと堤さんが志望していた会社のひとつだった。しかし、“超人気”の会社で、他の美大をトップで卒業した友人たちが何人も狙っていた狭き門。しかも、採用枠はたったひとつだった。

 悔しいが、画力では彼らには及ばない……。そう思った堤さんは、当たって砕けろの精神で、全力で自分をアピールした。すると、奇蹟的に合格。後で聞くと、最終的には、就職先も決まってないのに、東海岸からカリフォルニアにほとんど無一文で引っ越してくる「行動力」と、採用試験のときに見せた「意気込み」が買われたのだという。