地域金融機関に欠けている機能

 これらの取り組みは、それぞれが既に強い財務基盤を持っているからこそ可能なものだ。したがって、連載第49回で述べたように、地域金融機関に限らず、銀行一般に、更なる内部留保の積み上げを図り、十全な自己資本を備えることが「攻めの経営」の大前提であることに変わりはなく、そのために必要であれば地域内の経営統合、或いは、広域地銀同士の緩やかな提携の深化も考えざるを得ないのではないか。

 ただし、その場合でも、地域金融機関だけではどうしても取り組めないものがある。それは、地域企業へのコンサルティング機能を発揮、すなわち、経営不振企業には経営再建支援をし、健全な企業には成長支援をするにあたって、どうしても必要なエクイティ(資本)性の資金の出し手だ。昨今、金融庁は地銀に事業再生ファンドを運営するよう求めているが、これは誤っている。

 企業の成長を求めるファンドの出資者と、成長しなくてもいいから債権保全を第一に求める銀行の間には根本的な利益相反がある。仮にファンドの出資者の一部が一般の投資家ではなく国だったとしても、その大元の出資者である国民にとって、銀行の債権保全、すなわち投資家ではなく銀行の利益のために事業再生ファンドが使われるようなことは、あってはならないことである。

 加えて、ファンドの実質的な運営者が銀行である場合、その銀行は、ファンドが出資した企業の経営責任も問われることになりかねない。そもそも、そのような俄か作りのファンドに取引先の事業再生や成長を実現するためのノウハウを期待するのも無理だ。実績を積んだ独立系の企業再生ファンドやベンチャーキャピタルと提携し、エクイティ性の資金を得た上で顧客に最善の施策を提案すべきなのだ。

 地域金融機関は、経営統合の有無にかかわらず、こうした創意と工夫を重ねて、「地域金融機関らしさ」を失なうことなく、健全な発展を遂げて行って欲しいものである。