「困ったな……」。金融庁が、地方銀行への検査のあり方について、頭を悩ませている。悩みの種は、今年9月に検査・監督の基本方針として新たに掲げた「水平的レビュー」だ。
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その名の通り複数の金融機関に共通する課題への個々の取り組みを、目線を統一して業態横断的に検証し、相対評価をしていこうというものだ。メガバンクには11月5日、この手法で初の検査に入り、法令順守などを共通課題として検証を始めたが、地銀についてはまだ内容が固まっていない。
ただ、これまでの検査と違うのは、不良債権の状況など、健全性を切り口にして行うのではなく、収益性を最重要テーマに据えている点だ。
金融庁は、目下、どの地銀同士を比較し、どう話を持っていったら有意義な議論となるのかヒントを得るため、大手地銀に「ありとあらゆる面から、とてつもなく細かいヒアリングをして回っている」(大手地銀幹部)。
そこから浮かび上がってきたのは金利の問題だ。
どんぶり勘定体質にメス
実際、金利低下の深刻さは、地銀各行も認めるところだ。お膝元となる県を飛び出し、越境出店してきた地銀に「採算度外視のとんでもない低金利を吹っかけられる」(地銀役員)こともあれば、住宅ローンの獲得などで、地場の地銀同士が熾烈な競争を繰り広げるのも、もはや珍しいことではない。
おまけに、地銀がどんぶり勘定体質の業態だということが金融庁の不安を煽っている。
実は、「(法人、個人、マーケットなどの)各カテゴリーでどれだけもうけが出ているのか、把握の仕方に各行でレベルの差がある」と、ある地銀幹部も明かす。逆にいえば、「金利の設定方法を含めた収益に対する考え方にこそ、銀行の性格が表れる」(金融庁幹部)。