中国の民主化の可能性を探る:
華人社会は共産党の意思決定に影響力を持てるか

 以前論じたように、中国では「軍事的な覇権国家」と「市場経済のルールの枠内での経済大国」の2つの方向性がせめぎ合っている(前連載第64回を参照のこと)。つまり、今回の香港の民主化運動を経て、中国は民主化が本土にも広がり、普通選挙が導入されて共産党が「自民党化」するという可能性もあれば、軍事的な暴走の懸念もある。日本としては、中国が民主化に向かうようになにをすべきかを模索しなければならないだろう。

 この連載では、中国共産党に強い影響力を持つと思われる華人社会に働きかけることを提案した(第67回を参照のこと)。台湾、香港やシンガポール、マレーシア、タイなどの東南アジアに広がる華人社会は、中国の軍事的拡大を望んでいない。

 例えば、中国軍が太平洋に進出すれば、台湾は瞬く間に実効支配されるし、香港、シンガポール、マレーシアなどへの軍事的影響力も強くなる。市場のルールに基づいて欧米と商売をしてきた華人社会の経済活動は制限されていく可能性が高いからである。そこで、日本は華人社会に対して、中国の軍拡を止めるために政治的に動くことの重要性を訴えていくべきだと考えたのである。

 だが、その時は具体論をなにも提示していなかった。今回は、華人社会が中国共産党の意思決定に影響を及ぼせる可能性について、より具体的に考えてみたい。

華人財閥と中国共産党:
習近平国家主席と華人財閥

 華人が経営する企業は、台湾、香港、シンガポール、マレーシア、タイなどアジア地域や、北米、欧州など世界中に存在している。特に、華人企業は、農業から製造業、不動産、金融など多角的なビジネスを行う財閥を形成し、アジア地域で確固たる地位を築いてきた。代表的な華人財閥は、香港の「不動産王」李嘉誠グループ(長江実業グループ)、台湾の王永慶・王永在兄弟によって設立された台湾プラスチックグループ(Formosa Plastics Group)、タイのチャルーンポーカパン(Charoen Phokphan=CP)財閥、インドネシアのサリム(Salim)グループ、シンガポールのOCBCグループなどである。華人財閥は、アジアの高度経済成長に多大なる貢献を果たしてきた。