報酬制度は「急所」の一つ
20カ国・地域の財務相と中央銀行トップが集まるG20の会合が、9月5日、共同声明を採択して閉幕した。G20という枠組みもすっかり定着した。旧来のG8は早晩不要になるのではないだろうか。
民主党政権の国際金融に対する姿勢は未だよく分からないが、同党がこれまでの自民党政権のアメリカ一辺倒の姿勢を見直すとすれば、G20の枠組みに重心を置いた国際金融外交になる可能性がある。そうだとすれば、それは、適切だろう。
今回のG20の会合自体は、声明の大枠で、世界経済が改善したことを認めつつも、引き続き警戒が必要で、緊急的な金融・財政政策に関して、いわゆる「出口戦略」を視野に入れるのは時期尚早との見方で各国が一致しており、大きな異論は出ていない。
出口戦略の実施の有無及び各国毎の実行の順序は、各国民の利害に直接的に影響する大問題だが、景気の二番底が懸念される現在、もう少し考える時間がありそうだ。
さて、G20の声明、特に声明の付帯文書の中で触れられた金融マンのボーナス問題が興味深い。主に米英と仏独で意見が対立している。
もともと大陸欧州勢には、サブプライム問題がアメリカの政策ミスによって発生した問題で、欧州の経済は(多少は欧州の金融機関も)その被害者であるという認識がある。そうした恨みの感情が働いたせいか、彼らが主張する金融機関の「その人の行動がリスク・テイクに重要なインパクトを持つ人物」の報酬に対する規制の必要性は、バブルの発生原因に関して、まさに急所の一つを突いている。攻める側としては、政治的にも共感を得やすいし、しかも「急所」なのだから、張り合いのあるテーマだ。
資本の増強か、ボーナス規制か
米英は、金融機関の報酬に問題があることに一定の理解を示しつつも、規制を強化すると、金融取引の国外流出を招く(英・ダーリング財務相)という危機感がある。また、当然のことながら、米英の金融業界の(正確には幹部金融マン達の)利益の観点からも、米英の政策当局は、金融マンの報酬制度に対する規制強化に消極的であるようだ。