Photo:読売新聞/アフロ
10月18日、三菱重工業の子会社である三菱航空機が、国産初のジェット旅客機となる「MRJ」のお披露目式を行った。国産旅客機の開発は日本航空機製造のYS-11型機以来、実に50年ぶりとなる。式典の参加者からは、美しい機体に称賛の声があがり、その性能の高さも喧伝されて、MRJに対する期待が高まっている。
受注も全日空始め407機(JALとの基本合意を含む)と順調に見えるが、MRJの将来はそれほど楽観できるのか。結局、赤字を累積して撤退したYS-11の二の舞にならないのか。開発費1800億円を投じるMRJ成功の条件を考えてみよう。
新しい市場を開拓できるか
成功の第1の条件は新しい市場を開拓できるかである。
まず、世界の民間航空機の市場構造を、自動車に例えて整理してみよう。民間航空機メーカーとしては、米ボーイングと欧州のエアバスが2大巨頭だ。
旅客機では、第1の区分が大型高級セダンに当たり、座席数400席以上のボーイング747やエアバスA380。こうした機種はエンジンを4つ備えているので、エンジン2つの機種と比べてメンテナンスコストが倍かかり、今や特別な用途でしか使われない。なぜなら、これよりやや小型で座席数が300~370席のボーイング777が、エンジン2つで大陸間の移動ができることを示したからだ。その意味で、ボーイング777は画期的な旅客機である。
第2の区分は座席数が約200~300強のボーイング787やエアバスA350で、いわば一般的な中型セダン(しかもハイブリッドカー)。第3の区分が約110~190席のボーイング737やエアバスA320で、こちらはコンパクトカーに当たる。第4の区分が 座席数が100席未満のいわば軽自動車で、リージョナルジェットと呼ばれる。MRJの正式名称は「三菱リージョナルジェット」。まさに名は体を表すで、この第4のセグメントを狙っている。
リージョナルジェット(以下RJ)とは、座席数が50~100席程度で、航続距離が3000㎞程度の小型のジェット機を指し、大型・中型のジェット旅客機よりも低騒音で、より短い滑走路で離着陸できる点に特徴がある。MRJは標準座席数が78席のMRJ70と92席のMRJ90があり、カタログ価格で4680万ドル(約47億円)である。
RJの用途はハブ(拠点)空港から周辺都市の空港を結ぶ路線、あるいはハブ空港を経由しない都市間の路線への活用だ。LCC(ローコストキャリア)の勃興で、第3の区分に対する需要が急増しているのと同様に、RJ運行もこれからさらに拡大すると予想されている。三菱サイドでは今後20年間で約5000機の需要があり、その半分を取りたいと強気だ。