昨年は5年連続で販売量が過去最低となったビール系飲料を尻目に、ウイスキーの消費が伸びた。
ウイスキー市場は減税された1989年を例外に、25年間も右肩下がりが続いていた。それが昨年、前年比10%増に転じた。市場を牽引したのは、国内シェア6割を占める最大手のサントリー。前年比14%増の拡大となった。なかでも“大衆ブランド”の「角瓶」は同31%もの成長だった。
復権の原動力は、ウイスキーを炭酸で割る「ハイボール」。20~30年前までは広く愛飲されていた定番メニューだが、若者には新鮮で、中高年には懐かしさを誘う。ここにサントリーは着目し、2年前から拡販戦略に本腰を入れた。
女優の小雪を起用して話題を集めたCMを筆頭に、社員の名刺の裏に「おいしいハイボールの作り方」の手順を印刷したり、味を一定に保つ業務用の角ハイボールサーバーを開発したりするなどしてヒットに結び付けた。
時代の追い風もあった。飲食店ではハイボールの価格は生ビールより安めの設定で、デフレ不況下では客の懐に優しい。飲食店にとっても、中ジョッキで原価200円弱の生ビールに比べて、酎ハイ並みに原価が安く(50~100円)利益率の高いハイボールは魅力的な商品。しかも酎ハイは飽きられていて、それに替わるヒット商品の出現を心待ちにしていた。
ハイボールをメニューに載せている飲食店は、2008年の約1万5000店から09年には約6万店に急拡大。今年は国内飲食店の3分の1に当たる10万店を見込む。
相場康則・サントリー酒類社長は「好調といっても、過去25年で失われた市場の大きさを考えると、手放しで喜んでいられない」と気を引き締める。今後はハイボールをエントリー商品と位置づけ、高級ブランドへの誘導や自宅での消費拡大など、ウイスキーの新たなファンづくりを狙うという。
ハイボールブームを一過性で終わらせないマーケティング力が問われる。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木 豪)