ノルマンディー上陸作戦は「オーバーロード作戦」という暗号名で呼ばれたが、英国やアイルランドに設けられた基地から集合地点を経て各海岸に兵員・装備を運ぶ海軍主導の作戦は、別途「ネプチューン作戦」と名づけられていた。一時的に交通渋滞を起こしたものの、上陸作戦全体がスムーズに遂行できたことに、この精緻な作戦が寄与している。

 上陸戦の頃には、西部戦線のドイツ空軍はかなり弱体化していた。とはいえ、制空権の確保には細心の注意が払われている。上陸後のドイツ軍の援軍の集結や物資の補給を妨げるため、鉄道など輸送網への空爆は、フランス国内のレジスタンスの協力も得て、執拗に繰り返された。

 上陸前の艦砲射撃については、これまでも行われてきた。上陸戦の最も大きな弱点は、輸送船から揚陸艇が海岸に向けて発進する直前と前進中に、敵陣 地からの攻撃を抑える砲兵の支援がないことだ。それを補う役割を艦砲射撃は担うのだが、艦砲は対艦船を標的として設計されており、斜面の裏側や遮蔽された 標的に対しての効果は限定されてしまう。

 ノルマンディー上陸に際して特筆すべきは、敵陣地を叩くため、巡洋艦など比較的小型な戦艦がより接近して砲撃を加え、活躍したことだろう。

 ここまでは設備や装備の話を中心に、ノルマンディー上陸戦でのイノベーションについて見てきた。次回に、リーダーシップや創意工夫という点からも、革新性を見ていきたい。