ルールを完璧に理解した人が、
勝てる可能性が高い
杉本 陽三さんには、ルールを勉強しろということも、よく指摘していただきました。
立花 野球だってそうだけど、ルールを知らないと勝てる勝負も勝ちきれない。以前の杉本君には、すごくおおざっぱにルールを捉えているところが垣間見えたからね。でも、それは杉本君に限ったことではなくて、たとえば株主のルールって何かということさえ、経営者の多くがちゃんと理解していなかったりする。
杉本 ルールを知ってる方が有利なのは当然ですよね。
立花 そうなんだよ。経営者は、まずルールを完璧に勉強する必要がある。ただし、銀行員が融資の稟議を通す時には、ルールを超えた「人間味」のようなところで話が決まることもある。ルールとしては正しいことを言っても稟議は通らないことがあるからね。経営者は、ルールを理解した上で、人間として魅力的であることを求められるということだね。
杉本 人間性の部分でいうと、エスグラントが危機に直面した時に「恥ずかしい生き方はするな、ちゃんと民事再生したほうがいい」とはっきりとアドバイスしてくださったのも陽三さんでした。
立花 そんなこともあったね。でも、本当にそうなんだよ。杉本君はまだ若かったし、正々堂々と倒れたのなら、その失敗、反省を教訓に、必ず再起できると思っていたからね。多くの期待に応えられなかった、多くの人を裏切る結果となったことも忘れてはならない。本の中にも有名な経営者との交友がたくさん描かれているけど、杉本君は豊かな人脈をもっている。注意しなきゃいけないのは、そういう友達や、親族などからお金を借りてしまうと、人生そのものが破綻してしまうことがあるということだね。あくまでも仕事は仕事として友人との関係にケジメをつけながら、最後まで正々堂々と勝負して失敗したのが、実はとても大事なことだったんだと思う。
杉本 おかげさまで、本にも書かせていただいたみなさんとは、今でも親しくさせてもらっています。
立花 そういう意味でも、経営者は最終的に「人」なんだよね。経営破綻したあとも、杉本君の周囲には優秀な部下や友人がちゃんといてくれたでしょ。恥ずかしい、卑怯な生き方をしてしまうと、落ちていく時には周囲の人はみんな逃げ出してしまう。私がおだててもしょうがないけど、杉本君にはやはり人として、経営者としての人間的な魅力や力があったということなんだと思う。だから、みんな付いてきてくれて、再起を果たすことができた。
杉本 ありがとうございます。本当に、友人や社員のみんなには感謝しています。